【初心者にもおすすめ】私が3DプリンターのモデリングにOpenSCADを選んだ理由

2025年6月18日

3Dプリンターを始めてみたものの、「モデリングツールってたくさんあって、何を使えばいいの?」と迷っていませんか?実は、私も最初は同じ悩みを抱えていました。Fusion 360、Tinkercad、Blender……有名なツールをいくつも試しながら、自分にとって“しっくりくる”モデリングツールを探していました。

そんな中で出会ったのが、OpenSCADです。最初は「コードでモデリング?」と戸惑いましたが、使っていくうちにその魅力にどんどん引き込まれていきました。

この記事では、OpenSCADの特徴や魅力、他のツールとの違いを紹介しながら、「なぜ私が3DプリンターのモデリングにOpenSCADが選んだのか?」を紹介していきます。


OpenSCADとは?コードで3Dを描くユニークなツール

OpenSCADは、スクリプト(プログラムコード)で3Dモデルを作るという、他の3Dモデリングソフトとは一線を画すモデリングツールです。
無料で使えるオープンソースソフトで、Windows、Mac、Linuxに対応しています。


OpenSCADの主な特徴と魅力

ここからは、実際に私がOpenSCADを使ってみて感じた、他のモデリングツールにはない特徴や魅力をご紹介します。

精密なモデリングが得意

OpenSCADは、数値ベースでモデリングを行うため、精密な設計が得意です。

ノギスや定規を使って測定した寸法をそのまま数値としてコードに入力するだけで、正確なサイズのモデルを作成することができます。

他のツールでは「画面上で大きさを感覚的に調整する」ことが多いですが、OpenSCADではミリ単位で寸法を指定し、設計通りの出力が可能です。

サイズの調整がしやすい

OpenSCADは、サイズの調整が非常にしやすいです。

3Dプリンターでは、既存の製品にぴったりはめ込むような追加パーツを作る場面がよくあります。しかし、寸法通りにモデリングしたはずなのに、実際に出力してみると「きつすぎる」あるいは「ゆるすぎる」といったことは珍しくありません。

このような場合、何度か印刷しながら調整していくことになりますが、OpenSCADなら「定義値(変数)」として寸法をまとめて管理できるため、必要な箇所の数値を変更するだけでモデル全体をすぐに再生成できます。

0.2mmだけクリアランスを広げたと思ったときも、関連するパラメータをひとつ変えるだけで調整ができます

軽量で高速に動作

OpenSCADは非常に軽量で、高速に動作するモデリングツールです。

私自身、グラフィックボードのないパソコンを使っているのですが、OpenSCADはストレスなくサクサク動作しています。

他のモデリングツールでは、少し複雑な形状を作り始めると画面の動きがカクついたり、操作が重くなったりして実質的に作業が難しくなることがよくありました。

それに対してOpenSCADは、コードベースで形状を定義するスタイルのため、処理が非常に軽く、古いPCやスペックの低い環境でも快適に作業ができます。

高性能なPCは持っていないけど、3Dプリントに挑戦してみたいという方には、OpenSCADは非常におすすめです。

モデルのバージョン管理が可能

OpenSCADのモデルはテキストファイル(.scad)として保存されるため、Gitなどのバージョン管理ツールと非常に相性が良いです。定期的にコミットしておけば、数日前や数か月前の設計状態にも簡単に戻ることができるので、「あの時の形状に戻したい」という時にも安心です。

他の多くのモデリングツールでは、ソフトを閉じてしまうと変更履歴が失われてしまうことが多いため、履歴管理がしやすいという点はOpenSCADの大きな強みだと感じています。

学習コストが比較的低い

「コードを書く」と聞くと、難しそうに感じるかもしれませんが、OpenSCADの構文はシンプルでわかりやすいのが特徴です。プログラミングが初めての方でも、数日触ってみるだけで基本的なモデリングができるようになります。

さらに環境を整えることで、Pythonを使ったモデリングも可能になります。Pythonに少しでも触れたことがある方であれば、その日からスクリプトベースのモデリングを始められるはずです。


OpenSCADのデメリット・苦手な部分

とても便利なOpenSCADですが、万能というわけではありません。ここでは、使ってみて気づいた苦手なところをまとめてみました。

視覚的な操作ができない

OpenSCADでは、マウスでドラッグして直感的にオブジェクトを移動・回転することができません

たとえばモデルを横に動かしたい場合、X軸かY軸かを意識して数値で移動量を指定する必要があります。回転も同様で、どの軸を中心に回すかを常に考えてコードを書く必要があります。

直感的に動かせる他のツール(例:Fusion 360やBlenderなど)と比べると、この点は明確に操作性で劣っていると感じます。

プログラミング的な思考が求められるため、慣れるまでは試行錯誤が多くなるかもしれません

複雑な形状・曲線のモデル作成が難しい

OpenSCADは、立方体や円柱などの基本的な形状を組み合わせて構築するモデリングには非常に向いていますが、曲線の多い複雑な形状の作成は苦手です。

特に、人体やフィギュアのような有機的で滑らかな形状を作る場合、OpenSCADでは非常に手間がかかり、現実的ではありません。

このような造形を行いたい場合には、Blenderのようなスカルプトやポリゴン編集に対応したツールの使用をおすすめします

エラーメッセージがわかりづらい

OpenSCADでは、コードにミスがあるとエラーメッセージが表示され、モデリング処理が実行されません

しかしこのエラーメッセージは、プログラミング経験者向けの表現が多く、初心者には少しわかりづらいことがあります。特に、どこが間違っているのかがすぐにわからず、修正に時間がかかることも少なくありません。

とはいえ、近年では生成AI(ChatGPTなど)を活用することで、エラーの原因や解決方法を調べるハードルが大きく下がっています。エラーで行き詰まっても、コードとエラーメッセージをそのまま貼り付けて質問すれば、かなりの確率で解決できます。

エラーで止まっても「AIを使って学びながら進める」時代になってきているのは、初心者にとって大きな追い風です

OpenSCADはこんな人におすすめ!

  • 自作のジェットパーツや機構部品を3Dプリントしたい人
  • 数値での制御が好きなエンジニア気質の方
  • モデルの再利用性・保守性を重視したい人
  • ソフトにコストをかけたくない、無料で始めたい初心者

まとめ:OpenSCADは「考えるモデリング」に最適

GUI操作で感覚的に形を作るツールが多い中、OpenSCADは「設計する」ことに特化したモデリングツールです。

慣れると、まるでレゴブロックを数式で組み立てるように、自在に形を生み出せるようになります。

3Dプリンターを本気で活用したいなら、一度OpenSCADを触ってみてください。
きっとそのシンプルさと奥深さに驚くはずです。